金沢機工株式会社
コラム

コラム

鳥獣被害の軽減に繋がるジビエとは?取り組み事例も紹介!

2022.02.22

有害鳥獣

近年ニュースや新聞で、「野生のシカやイノシシが畑を荒らした」「街中に出没して地域住民を脅かした」「道路に立ち入って車と衝突する事故が発生した」などの報道を目にすることが増えました。

 

実際、農林水産省が公表している調査結果によると、農作物だけの被害でも年間約161億円と多額の被害が発生しており、私たちの日常生活にも大きな影響を及ぼしています。

 

この現状を解決できる手段として注目を集めているのが、「ジビエ活用」です。

 

ジビエとは、狩猟によって捕獲した野生の鳥獣(シカやイノシシなど)を、捕獲後に適正な処理を行い、食肉利用することを指します。

 

しかし、ジビエ活用には、施設整備に多額の費用がかかったり、需要と供給がアンバランスであるために積極的な狩猟が出来ないなどの課題があるのが実情です。

 

そこで、今回の記事では鳥獣被害の軽減に繋がるジビエの取り組みについて知ってもらうべく、「鳥獣被害の原因や現状」や「ジビエの取組」や鳥獣被害解決に向けた企業のジビエ取組事例について分かりやすく解説していきます。

 

ポイントは以下です。

 

 

この記事のまとめ

・令和2年度の野生鳥獣による農作物への被害額は約161億円

・野菜やイネ、果樹の3分類で被害金額の約60%を締めている

・ジビエとは狩猟によって捕獲した食用の野生の鳥獣のこと

・農林水産省がジビエ取り組みを推奨している

・鳥獣被害解決に向けた企業のジビエ取組事例を3社ご紹介

 

 

鳥獣被害の現状と原因について

 

野生生物が畑を荒らすことによって、毎年農作物に大きな被害が発生しており、近年その被害は増加の一途です。

 

この農被害を解決するためには、農作物への詳しい被害額や鳥獣被害が拡大している原因など、現状を正しく理解する必要があります。

 

ここでは鳥獣被害の実態や原因について解説していきますので、参考にしてください。

 

 

 

鳥獣による被害額

 

 

令和2年度の野生鳥獣による農作物への被害額は約161億円です。

 

令和元年の農作物の被害額が約158億円だったため、悪化傾向にあることがわかります。

出典:農林水産省 鳥獣被害対策

 

しかし、実際の被害はこれだけではありません。

 

営農意欲の減退や新規就労者の減少に繋がるなど、数字に現れる以上に深刻な影響を及ぼしています。

 

 

 

農作物へ被害の内訳

 

 

令和2年度の農作物被害金額約161億円のうち、野菜やイネ、果樹の3分類で被害金額の約60%を締めています。

 

農作物への被害について、種類ごとに被害金額が大きい農作物は以下です。

 

区分

被害金額(万円)

野菜

383,080

イネ

374,790

果樹

346,038

飼料作物

263,739

いも類

81,529

工芸作物

52,128

マメ類

51,315

ムギ類

31,365

雑穀

14,293

その他

12,632

合計

1,610,908

 

出典:農林水産省「野生鳥獣による農作物被害状況 令和2年度

 

上記から、野菜やイネ、果樹を生産している方にとって、鳥獣被害は他人事でないことが分かります。

 

 

 

鳥獣被害が拡大した原因

 

 

鳥獣被害が拡大した原因は、主に以下の2つがあります。

 

  • 狩猟者の減少
  • ・耕作放棄地の増加

 

この2つの原因について、詳しく解説していきます。

 

 

 

狩猟者の減少

 

 

野生鳥獣の捕獲をしている狩猟者は、高齢化に伴い年々減少しています。

 

環境省の調べによると、鳥獣の狩猟者は1975年には51.8万人いましたが、2017年には21万人と半減している状況です。

 

また、狩猟免許取得者のうち、約6割は60歳以上ということから考えても、今後高齢化による狩猟者減少は続くことが予想されており、大きな課題です。

 

出典:農林水産省

 

 

 

耕作放棄地の増加

 

 

耕作放棄地とは、1年以上手つかずで放置されており、作物を栽培せずにその後何年も耕作するつもりのない土地のことを言います。

 

過疎化や高齢化に伴い、このように誰も手を付けなくなった耕作放棄地が増加したことも、鳥獣被害が増加している一因です。

 

ちなみに、農林水産省の調べでは、1990年は21.7万haだった耕作放棄地は、2015年には42.3万haと約2倍に増加しており、今後も増加することが予想されています。

 

出典:農林水産省 「荒廃農地の現状と対策について」

 

 

鳥獣被害解決に注目を集めているジビエ

 

 

鳥獣被害解決策として注目を集めているのがジビエです。

 

ジビエとして利用することで、捕獲量が増えて、生息数を減らすことができるとされています。

 

農林水産省もジビエ利用拡大に積極的で、「総合対策交付金などの補助金」や「ジビエサミット」というイベントの開催などの様々な取り組みを行っているのが現状です。

 

では、鳥獣被害解決に注目を集めているジビエについてより詳しく解説していきましょう。

 

 

 

ジビエとは

 

ジビエは、フランス語の「gibier」が語源で、狩猟によって捕獲した食用の野生鳥獣(シカやイノシシなど)のことです。

 

フランス料理界では古くから高級食材として重宝され、高貴で特別な料理として愛され続けてきました。

 

昔のフランスでは、ジビエを使った料理は自分の領地で狩猟ができる、上流階級の貴族の口にしか入らないほど貴重な食べ物だったそうです。

 

そんなジビエは、農林水産省からの支援などもあり、日本でも徐々にジビエが浸透してきており、今ではジビエ専門店が街中にできたり、旅館の名物料理としてジビエが食べられるようになっています。

 

 

 

ジビエ取り組みの内容

 

 

農林水産省は、農村地域で深刻な被害をもたらす野生鳥獣の被害防止対策として、ジビエの取り組みを推奨しています。

 

実際、国からの補助金や支援により、捕獲数が年々増加する野生鳥獣を地域資源として捉え、野生鳥獣肉(ジビエ)として有効活用しようと、前向きに取り組んでいる自治体や企業も少なくありません。

 

ちなみに、農林水産省では、捕獲した鳥獣の加工処理施設の整備や捕獲した鳥獣を用いた商品の開発、販売・流通経路の確立などの取り組みを支援するほか、食肉利用の取り組みを全国的に推進する観点から、品質確保・衛生管理等に係るマニュアルの作成・配布や技術研修等を実施しています。

 

 

 

ジビエ取り組みの課題

 

 

ジビエ取り組みには、法整備の課題や費用の課題など、数え始めたら限りがないほど沢山あります。

 

それらの課題をよく理解したうえで解決していくことが、ジビエに取り組んでいくうえで非常に重要です。

 

 

 

地域における捕獲体制の整備

 

 

ジビエの取り組みを始めるためには、まずは地域における捕獲体制の整備が課題です。

 

具体的には、野生鳥獣を捕獲する人材の確保や人材育成が必要不可欠となります。

 

ジビエ利用に適した捕獲方法を学んだり、捕獲現場から解体処理施設へ鮮度を保ったままの移送方法・体制の確立をすることは、ジビエの取り組みを成功させるために非常に重要です。

 

 

 

施設整備に費用がかかる

 

 

捕獲した鳥獣をジビエ用の食肉加工する施設の整備には、莫大な費用がかかります。

 

衛生管理を確立する必要もあるため、施設整備に数千万円のコストがかかり、なかなか個人はもちろん、企業でも設備投資を行えないのが実情です。

 

そのため、国や行政からの補助金などを活用することが必須になります。

 

 

 

需要と供給がアンバランスである

 

 

まだまだ需要と供給がアンバランスであるのが課題です。

 

ジビエという言葉の認知は徐々に広がってきていますが、実際にジビエ肉を食べたことがある方は少なく、消費需要が小さいと言わざるを得ません。

 

また、高齢化による狩猟者の減少もあり、野生鳥獣の安定供給自体が難しいのも大きな課題です。

 

需要と供給のバランスが保てずに、採算が取れないと悩む方も少なくありません。

 

 

 

鳥獣被害解決に向けた企業のジビエ取組事例をご紹介

 

野生鳥獣により農作物の大きな被害が出ており、その鳥獣被害の軽減に繋がる取り組みとして注目されているのがジビエです。

 

実際に企業でジビエに関して、積極的に取り組んでいる企業も増えてきています。

 

ここでは、鳥獣被害解決に向けた企業のジビエ取組事例をご紹介していきましょう。

 

 

 

㈱ぐるなびの取組事例

 

 

㈱ぐるなびの取り組みは、全国ジビエフェスタ開催によるジビエの認知向上です。

 

農林水産省「令和3年度全国ジビエプロモーション事業(ジビエフェア開催事業)」の事業実施主体として、ジビエフェスタを2021年11月1日(月)から2022年2月28日(月)まで開催しています。

 

ちなみに、ジビエフェスタは、全国約1,200店舗の飲食店やホテル、小売店、ECサイトなどで、国産の野生鳥獣肉(ジビエ) を活用したメニューや商品を、特設サイトで紹介するというイベントです。

 

飲食店や事業者でのジビエ利用拡大を促進するとともに、消費者にジビエの魅力を伝え、認知を広げることで「ジビエをもっと知って・食べてもらうこと」を目指しています。

 

出典:ぐるなび

 

 

ALSOK グループの取組事例

 

 

ALSOKグループの取り組みは有害鳥獣対策サービスです。

 

ALSOKグループでは有害鳥獣対策サービスとして、鳥獣被害対策に必要な対策用品(防護フェンス、ICT機器やわな(箱わなや囲いわな))の販売から設置・管理、鳥獣の駆除まで、トータル的にサポートを行っています。

 

出典:ALSOK

 

 

金沢機工㈱の取組事例

 

 

元々金沢機工では、ジビエとして利用できない個体やジビエ利用された後の残渣を、炭化し資源化する炭化装置を販売していました。

 

しかし、鳥獣対策やジビエ化を一貫してサポートしたいという思いから、㈱DMM Agri Innovationと金沢機工で業務提携。

 

安心安全で持続可能なジビエ流通の実現に向けて、ジビエ簡易加工処理施設と残渣炭化装置の格安セット販売を行っています。

 

捕獲した野生鳥獣でも食肉として扱うことのできない病気を持った個体や、捕獲後時間が経過し過ぎた個体、ジビエ利用した後の残渣を廃棄するのではなく、残渣炭化装置にて炭化することにより、資源として再利用することが出来るのが大きなポイントです。

 

出典:金沢機工

 

 

 

まとめ

 

農家にとって、農作物への深刻な被害を与えている、野生鳥獣被害は大きな課題です。

 

この野生鳥獣被害の解決策として、食肉利用するジビエが注目されています。

 

そこで、この記事では、ジビエとはどういったものなのか、取り組みの背景やジビエが抱える課題について詳しく解説してきました。

 

ポイントは以下です。

 

 

この記事で紹介したポイント

・令和2年度の野生鳥獣による農作物への被害額は約161億円

・野菜やイネ、果樹の3分類で被害金額の約60%を締めている

・鳥獣被害が拡大した原因は「狩猟者の減少」と「耕作放棄地の増加」

・ジビエとは狩猟によって捕獲した食用の野生の鳥獣のこと

・農林水産省がジビエ取り組みを推奨している

・ジビエ取組の課題は施設整備に費用がかかる事や需要と供給がアンバランスである

・鳥獣被害解決に向けた企業のジビエ取組事例を3社ご紹介

 

 

鳥獣被害の現状や原因、ジビエ取り組みについて、正しく理解する参考にしてください。

 

 

 


page
top