政府は、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、循環社会への変化を進めていこうとしています。資源の有効活用と環境負荷の軽減は大きなテーマとなっており、その対策の一つとして注目されているのが、バイオマスです。
世界有数の森林国である日本では、バイオマスの中でも木質バイオマスの利用を、これまで以上に進めようとする動きが広がっています。
今回は、木質バイオマスとは何か、どのような種類があるのか、なぜ木質バイオマスが求められるのかなどについて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
木質バイオマスとは?
木質バイオマスとはバイオマス資源の一つで、廃材や未活用の木材などを活用したバイオマス資源です。
戦後の日本では、山からとれる薪や炭を燃料エネルギーとして活用していました。しかし、その後の経済成長期では、石油が燃料の中心となり、大量に消費されるようになったのです。
近年になって地球温暖化など環境問題が検討されるようになり、環境的なメリットがある木質バイオマスが注目されるようになっています。
木質バイオマスの種類
木質バイオマスは、その供給源から「廃棄物系」「未活用系」「資源作物系」の3種類に分けられます。それぞれの特徴について解説しましょう。
廃棄物系の木質バイオマス
廃棄物系の木質バイオマスは、建築廃材や家具の製造過程で発生する木材の残骸などのことです。
製材工場などで発生する残材は年間約610万トンで、そのうち約90%が燃料や肥料などとしてリサイクルされています。
木造建築物の解体などによって発生する建築発生木材は年間約480万トンあり、紙やボードの原料や各種燃料になるなど、さまざまな素材として再利用されているのです。
これらの木材をバイオマスエネルギーとして再活用することで、廃棄物を削減し、循環型社会の実現につなげようとしています。
未活用系の木質バイオマス
未活用系の木質バイオマスとは、これまで利用されてこなかった林業残材や間伐材を指します。
森林を伐採したとき、材木に利用できない細い間伐材や枝木、木の根などが年間約390万トンも発生し、これまでは森林内に放置され、あまり活用されていませんでした。
従来、無視されていた林業残材や間伐材が、バイオマスとして利用を進めることにで森林資源の価値を高め、ゼロカーボン社会の実現に貢献するものに生まれ変わるのです。
資源作物系の木質バイオマス
資源作物系の木質バイオマスは、エネルギー生産を目的として栽培される木質植物です。
具体的には、速成林や特定のエネルギー作物がこれに該当します。初期成長の大きいヤナギやポプラ、またエネルギー発生効率が高いスイッチグラスなどが、木質バイオマス注目の資源作物です。
今後は低コストで収穫量を増大させるため、より効率的に栽培する方法が世界各地で研究されています。
木質バイオマスが環境に与える影響
環境問題が大きく取り上げられるようになったことで、木質バイオマスの利用は近年急速に広まっており、今後も拡大が進むと予想されています。木質バイオマスによって、環境にどういった影響を与えるのか確認しましょう。
カーボンニュートラルに貢献する
木質バイオマスを利用することは、カーボンニュートラルに大きく貢献します。
植物は生長する過程で光合成を行い二酸化炭素を吸収する一方で、エネルギーとして燃焼される際には二酸化炭素を放出し、これら二つがバランスを取ることによって環境への負荷を低減しているからです。
二酸化炭素排出の急増によってオゾン層破壊が進み、地球温暖化が世界的な問題となっています。日本政府も、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラル宣言をしました。
石油などの化石燃料に代わるエネルギーとして、木質バイオマスの活用を進めることは、カーボンニュートラルに近づく道となるのです。
資源を有効活用できる
木質バイオマスは、これまで廃棄していた未利用の資源を、役立つものとして活用できるようにします。
林業残材や間伐材は、材木としての利用価値が低く運搬コストがかかることから、これまで資源として活用されず、林間に放置されていました。
木質バイオマスの取り組みが広まりっていくことで、間伐材や林地残材の利用率は、2019年に約29%となり、2030年には33%以上を目標としています。
木質バイオマスの拡大によって、従来廃棄されていた材料の再利用が進められ、資源の循環が促進されるでしょう。
木質バイオマスの利用法
木質バイオマスは、化石燃料に代わる資源として用いられ、エネルギーを生成するリサイクル手法として注目されています。木質バイオマスには、これ以外にさまざまな利用方法がありますので、ここで紹介していきましょう。
土壌改良剤として利用する
木質バイオマスは、粉砕や炭化されて土壌改良剤として利用されることがあります。
樹皮であるバークを粉砕し発酵させたバーク肥料は、鶏糞や牛糞などの動物性堆肥よりも土壌改良効果が高いといわれ、広く利用されるようになりました。
また、炭化させて土壌に混ぜることでミネラルを補充し、透水性や保肥力を高める効果があります。
このように木質バイオマスを土壌改良剤として活用することにより、土壌の質が向上し、農業生産の効率が高まっているのです。
工業製品として利用する
木質バイオマスは、建材や家具、紙製品など多様な工業製品の原料としても利用されています。
端材や廃材を粉砕し接着剤と混ぜて成型したパーティクルボードは、木のぬくもりがあるボードとして、家具や建材などの製造に用いられている木材です。
また、木質バイオマスを製紙材料となるパルプの原料として活用したり、クッション性の高い舗装材として公園や遊歩道などで使用することも増えています。
こうした取り組みの広がりが、環境負荷の低い持続可能な製品製造を可能にするのです。
発電で利用する
木質バイオマスは、バイオマス発電の原料としても使用されています。
木質バイオマスは、燃焼させてエネルギーを生み出すだけでなく、燃焼して炭化したものは土壌改良剤として利用することも可能になるため、再生エネルギーとして一石二鳥の効果があるのです。
現在、木質バイオマスによる発電は注目を集め、多くの企業が導入しています。また、国や自治体でも木質バイオマスによる発電を後押ししており、補助金の給付などによって普及を進めているところです。
エネルギー消費において、化石燃料が70%以上を占めているなか、自然エネルギーの割合は年々高まっています。木質バイオマスの熱利用や電気利用はまだ低い水準に留まっていますが、政府や自治体の後押しもあり、木質バイオマス発電の割合は今後高まっていくことが予想されているのです。
木質バイオマスの有効活用を考えているなら金沢機工にご相談を
ここまで解説してきたように、木質バイオマスにはさまざまな可能性とメリットがあり、政府が掲げるカーボンニュートラル社会を実現するために、国や自治体も後押しをしています。
輸送コストや設備費用の問題など、克服すべき課題は残っていますが、各地でさまざまな取り組みが進んでおり、これからの発展が期待されるでしょう。
金沢機工では、環境保全に役立つ製品の開発に力を入れており、木質バイオマスに用いられる炭化炉や炭化装置では多様な製品を扱っております。
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