畜産業で発生する牛糞は産業廃棄物として扱われるため、処理に苦労している事業者は多いです。
牛糞処理は再利用が可能であり、堆肥として利用すれば有機性資源の有効活用につながるでしょう。
本記事では牛糞処理の方法や法律、注意すべき点などを詳しく解説します。
牛糞処理とは?
牛糞処理とは、畜産業で発生した牛糞を家畜排せつ物法に則って適切に処理することです。
家畜排せつ物法のルールや牛糞の再利用の方法などを知っておくことが求められます。
ここでは、牛糞処理の基本的な知識を解説します。
畜産農業で発生した牛糞は産業廃棄物に該当する
畜産農業において発生した牛糞は産業廃棄物として処理しなければいけません。
動物から生じるふん尿を放置すると環境や公衆衛生の悪化につながるからです。
牛糞を積み上げて放置する野積み、穴を掘って牛糞を貯めておく素掘りなどは、現在では不適切な処理とされています。
放置された牛糞が地下水や水道の汚染に影響すると懸念されているからです。
家畜排せつ物に伴って発生する環境問題は畜産環境問題と呼ばれており、対応が急務とされています。
牛糞は家畜排せつ物法を遵守して適正管理しなければいけない
牛糞の適正な管理や利用を促進する法律として家畜排せつ物法があります。
事業者は畜産業において発生した牛糞を家畜排せつ物法に則った方法で処理しなければいけません。
野積みや素掘りをするのではなく、環境に影響を与えない方法での適切な処理・保管が求められています。
家畜排せつ物の管理施設の構造設備や管理方法に関して厳格な基準が定めているのが家畜排せつ物法です。
たとえば、固形状の排せつ物を管理する建物は床をコンクリートなどで築造しなければいけません。
家畜排せつ物は管理施設で管理して、年間の発生量や処理方法などを正確に記録することが義務づけられています。
牛糞は再利用できる
牛糞は貴重な有機性資源であり、主に堆肥として再利用が可能です。
牛糞の再利用は、牛糞の処理によって発生する温室効果ガスの排出抑制の効果を期待できます。
牛糞を堆肥として利用すれば化学肥料の使用量の低減にもつながるでしょう。
持続可能な畜産業を促進するためにも牛糞の再利用は重要です。
牛糞を堆肥にして、地域にある耕種農家の稲わらなどと交換する試みは全国的に行われています。
耕種農家のニーズに合った堆肥の製造やペレット化など高度な取組みも生まれています。
牛糞処理の方法
牛糞処理の主な方法は以下の3つです。
- 堆肥化
- 液肥化
- 浄化
牛糞を堆肥や液肥として再利用すれば資源の有効活用につながります。
牛糞の浄化も環境問題への対策として有効な手段です。
以下では牛糞の処理方法について、それぞれ詳しく解説します。
堆肥化
牛糞の堆肥化とは、牛糞を微生物によって分解して堆肥にすることです。
微生物に分解される過程で牛糞に含まれる有害物質は取り除かれ、悪臭もなくなります。
堆肥は土壌に影響を供給し、通気性や保水性の改善の役割も果たすため、農業の土台となる存在です。
堆肥化のためには微生物が活発に活動できる環境を整える必要があります。
牛糞の堆肥化を効率的に進めるにはプラントの導入が効果的です。
さまざまな補助金制度を利用すれば、堆肥化プラントの設置にかかる費用を補えます。
液肥化
液肥化とは、牛糞を由来にして液体有機肥料を作り出すことです。
牛糞には固形分と液体の両方が含まれているため、堆肥化だけではなく液肥化も行えます。
牛から排泄された糞尿をスラリー処理施設で固液分離して微生物により分解させれば、固形物は堆肥、分離液は液肥として再利用可能です。
液肥は堆肥と比較して即効性が高いのが特徴であり、土壌に合わせて濃度を調整して使います。
堆肥と同様に農業において重要な役割を果たす存在であり、液肥の需要は高いです。
浄化
牛糞処理では液体成分が生じるため、浄化は重要な工程です。
牛から生じた糞尿から固形分を取り除き、液体成分を浄化槽に投入して浄化します。
浄化の作業では好気性微生物を活用して有害物質を分解させる方式が一般的です。
畜産業では排水を放流するには排水基準値をクリアしなければいけません。
浄化処理の設備を導入して、高度な処理技術を駆使することで排水として放流できるレベルまで浄化できます。
堆肥化と同様に微生物が活発に活動できる状況を整えるのがポイントです。
牛糞処理の機械を活用する
牛糞処理を行うには専用の機械を導入して活用するのが一般的です。
牛糞を発酵させれば堆肥になるため、専用の機械を用いなくても堆肥化は行えます。
しかし、水分調整を行いながら長時間発酵させて処理をするのは効率が悪いです。
牛糞処理の専用機械であれば、短期間で処理が完了し、高品質な堆肥を生み出せます。
専用機械を用いれば、生の牛糞をそのまま投入して無人で自動的に堆肥化の処理が進むため、人員コストの削減も可能です。
多くの畜産農家で堆肥化の専用機械が活用されています。
牛糞処理の注意点
牛糞処理は法律で厳格に規制されており、環境汚染や周辺住民とのトラブルを回避する措置が求められます。
牛糞を堆肥化して他者に渡す場合には届出も必要です。
以下では牛糞処理を進める場合に注意しておきたいポイントを説明します。
牛糞の施設外への流出を避けなければいけない
畜産業を営む場合は、牛糞が施設外に流出しないための措置を講じる必要があります。
牛糞が流出すれば、害虫や悪臭、環境汚染などの原因となるからです。
家畜排せつ物法によって牛糞の取り扱いは規制されており、違反した場合は罰則を受けます。
牛糞の施設外への流出により第三者に損害を与えれば、賠償責任を負う可能性もあるため注意が必要です。
牛糞の保管場所の設置や管理、点検を行い、問題があれば早急に対処しておきます。
発生する牛糞については常に量を記録して、発生量が過多な場合にはすぐ対処して周囲に迷惑がかかるのを避けなければいけません。
牛糞処理にコストがかかる
牛糞処理をするにはどのような方法を採用する場合でもコストがかかる点に注意しましょう。
堆肥化をするには、施設建設や電気工事、手続きなどの初期費用がかかります。
設備を運用していくための電気代や燃料費、人件費などのランニングコストの把握も重要です。
堆肥化のための施設を建設する場合は、1,000万円以上の費用がかかります。
ただし、堆肥化のための費用などは補助金によって一部を賄うことが可能です。
牛糞処理の方法を考える際には補助金の活用を考慮しましょう。
堆肥を他者に渡すには届出が必要
牛糞処理で作った堆肥を他者に渡す場合は事前に届出をしなければいけません。
有償・無償を問わず堆肥を他者に渡すには原則として届出が求められます。
他者に肥料を提供する場合は肥料の品質の証明として表示表の添付も義務です。
都道府県の肥料担当部署に問い合わせれば、届出の手続きについて詳細の説明を受けられます。
届出をせずに堆肥を他者に渡すと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になるため注意しましょう。
ただし、作った堆肥を自家利用する場合は届出をする必要がありません。
牛糞処理の新しい取り組み
牛糞処理の方法は研究開発が進められており、さまざまな新しい取り組みが登場しています。
牛糞をバイオガス発電に活用するケースやペレット化するケース、炭化装置を使用するケースなどです。
以下では牛糞処理で注目されている3つの取り組みを紹介します。
バイオガス発電に活用
牛糞をバイオガス発電に利用する事業が注目されています。
牛糞にはメタン菌が含まれており、バイオガスを発生させれば発電に利用可能です。
バイオガス発電によって発生する排熱を利用すれば温水も作れます。
発電した電力は固定価格買取制度によって買い取ってもらえるため、売電収入を得ることも可能です。
地域内の畜産農家が協力をしてバイオガスプラントを建設して運営していけば、牛糞を有効活用して地域経済の活性化を期待できるでしょう。
牛糞のペレット化
牛糞をペレット堆肥として生産を行う事例があります。
ペレット堆肥とは、牛糞などを発酵させて、圧縮・乾燥して製造される肥料のことです。
ペレット堆肥は軽量のため取り扱いが楽であり、粒状のため均一に散布しやすいなどのメリットがあります。
堆肥の運搬にかかる労力が少なく、小型の機械でも散布できて、小規模な農家でも導入しやすいです。
牛糞のペレット化には専門の機械を導入した施設の建設が必要になります。
ペレット化製造施設は補助金の対象となる場合があるため、今後は牛糞のペレット化の事例が増えていくと予測されています。
炭化装置の活用
牛糞処理の方法として炭化装置を活用する事例があります。
炭化とは有機物を熱分解させて炭にすることで、二酸化炭素の排出量を削減し、処理物の容量を減らせるなどのメリットがあります。
牛糞も炭化装置で処理できて、発生した炭は自然堆肥や燃料などとして活用可能です。
炭化装置の処理に伴って発生する廃熱の利用もできるため、エネルギーの有効活用を促進できます。
炭化装置は農業組合や養鶏場などで導入事例があり、牛糞処理にも有効です。
炭化装置の導入に興味のある方は金沢機工までお問い合わせください。
牛糞処理の方法について金沢機工までお問い合わせを!
牛糞処理は堆肥化や液肥化、浄化などさまざまな方法があります。
特に堆肥化は牛糞の有効活用につながり、環境問題を防ぐ意味においても価値が高いです。
金沢機工では牛糞処理の方法として炭化装置の提案ができます。
炭化装置を導入すれば、牛糞を炭にして自然堆肥として利用可能です。
牛糞処理の方法や炭化装置について詳しくは金沢機工までお問い合わせください。






