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予知保全と予防保全の違いとは?組み合わせる重要性も解説

2023.05.09

予知保全

「ダウンタイムで効率が下がってしまう」
「機器の不調や故障から計画に大きな影響が出てしまう」


製造業とは切っても切り離せない問題です。

 

効率的な稼働を目指すのであれば、予知保全や予防保全の導入は必要不可欠です。

 

本記事では予知保全と予防保全の違い、メリット・デメリットを紹介しながら、両者を組み合わせる重要性についても解説します。

 

この記事を読むことで目的に応じた保全方法を理解し、生産効率の向上やコストの削減を図ることができます。

 

予知保全と予防保全の違い

 



予知保全と予防保全は、機器や設備の故障を未然に防ぐという目的は共通していますが、その手段・方法が異なります。


下記の表でその違いを見ていきましょう。

 

 

予知保全

予防保全

保全方法

機器の状態や異常を検知して故障を未然に防ぐ

定期的な点検やメンテナンスを行い、故障を予防する

メリット

部品交換のタイミング最適化によるコスト削減

生産品質の担保

保全担当者の人件費削減

定期的なメンテナンスによる故障や経年劣化の回避

設備不作動時間の短縮による生産性向上

 

デメリット

導入コストがかかる

コストがかかる

システムの運用に専門知識が必要

完全に故障を防ぐことができない

大量のデータの取り扱いが必要

保全スケジュールの調整が難しい

 

予知保全は、機器の異常を事前に検知し、修理や交換をすることで故障や停止を未然に防ぐ手法です。

 

決まったタイミングでのメンテナンスではなく、不調を検知してから保全するのが特徴になります。

 

一方、予防保全は定期的にメンテナンスを行うことで故障や経年劣化を回避する保全方法です。

 

機器の好不調に関わらず保全業務を行うのが特徴になります。

 

予知保全のメリットとデメリット


上記の表で示した通り、予知保全にはメリットとデメリットがあります。


○メリット
・部品交換のタイミング最適化によるコスト削減
・保全担当者の人件費削減
・設備不作動時間の短縮による生産性向上

 

○デメリット
・導入コストがかかる
・システムの運用に専門知識が必要
・大量のデータの取り扱いが必要

 

このメリットとデメリットは予知保全の導入を検討する上で必ず考慮しなければならない内容です。

 

以下で詳しく解説していきます。

 

予知保全のメリット


部品交換のタイミング最適化によるコスト削減

 

予知保全は部品交換のタイミングを最適化できるため、無駄な部品交換を防ぎ、コストの削減を可能にします。

 

例えば、ある製造ラインにおいて部品を1年で交換する保全方法を取っていた場合、まだ部品交換が必要ない状態でも定期的に交換されてしまうため無駄なコストがかかります。

 

一方、予知保全はセンサーで機器の不具合の兆候を検知してから保全するため、最適なタイミングで交換することができます。

 

これによって不要なコストを削減できるのです。

 

保全担当者の人件費削減

 

従来の保全では、保全担当者が定期的に機械を点検する必要がありました。

 

しかし、予知保全を導入すれば、故障の予測や異常検知が可能になるため、必要なメンテナンスをより効率的に実施することができます。

 

メンテナンスの回数を減らすことで保全担当者の点検作業も減るため、人件費の削減につながります。

 

設備不作動時間の短縮による生産性向上

 

機器が故障した場合、生産ラインが止まり、復旧までに時間やコストがかかるため、生産性が低下してしまいます。

 

しかし、予知保全を取り入れれば、故障が起こる前に機械の異常を検知し、事前にメンテナンスを行うことが可能です。

 

メンテナンスを効率化させることで設備の不作動時間を短縮し、生産性が向上します。

 

予知保全のデメリット

導入コストがかかる

 

予知保全を導入するには、運用している機器にデータを収集するためのセンサーや計測器を設置する必要があります。

 

また、それらのデータを収集・処理するためのシステムを導入し、そのシステムに合わせて設備も改修しなければなりません。

 

導入に際して新たに準備するものが多いため、その分コストも高くなります。

 

システムの運用に専門知識が必要

 

予知保全システムを運用するためには、保全担当者に専門知識が必要です。

 

担当者はセンサーや計測器の設置、データの収集、処理、分析などに関する知識や技術を備えていなければなりません。

 

担当者にそうした知識や技術がないと、システムの運用効率が低下し、誤ったデータ分析や改善策がなされる危険があるからです。

 

システム運用のためには、スタッフの教育やトレーニングに適切な予算を割く必要があるでしょう。

 

大量のデータの取り扱いが必要

 

予知保全システムから大量のデータが収集されるため、取り扱いに時間や労力が必要となります。

 

データの分析結果を可視化する作業や、そのデータを踏まえた運用知識なども不可欠です。

 

適切にデータを分析することで、機器の状態や故障の原因を特定し、保全戦略を改善することが可能となります。

 

予知保全の事例

自動車部品の製造、販売メーカーであるA社では、焼き入れ・焼き戻し炉のラインに金沢機工株式会社の機工報というツールを導入し、モーター電流値の変化をチェックしました。

 

これにより、故障の予兆が検出され、焼き入れコンベアの故障による損失を回避することができました。

 

顧客からは、「操作が分かりやすく、分析結果から現状を読み取ることも容易なので、変化が分かりやすいと思います。品質のトレーサビリティとしても活用できますね」

 

「もし機工報を導入して、2月~3月時点で異常を把握、4月に予知保全していれば、概算で1800万円ほどの損失金を回避できていました」といった声をいただいています。

 

機工報|オリジナル商品|金沢機工株式会社

 

予防保全のメリットとデメリット


予防保全にもメリットとデメリットがあります。


メリット
・生産品質の担保
・定期的なメンテナンスによる故障や経年劣化の回避

 

デメリット
・コストがかかる
・完全に故障を防ぐことができない
・保全スケジュールの調整が難しい

 

以下で詳しく解説していきます。

 

予防保全のメリット

生産品質の担保

 

設備が故障や劣化で使えなくなった場合、生産品質に大きく影響します。

 

予防保全は、定期的なメンテナンスによって機械の動作を維持するため、生産品質を担保することができます。

 

定期的なメンテナンスによる故障や経年劣化の回避

 

定期的なメンテナンスを行うことで、消耗が進んでいる箇所を発見し、故障を回避することができます。

 

それによって早期に対処することができるため、機械の不調による生産ラインの中断や停止を防止し、生産性を維持することが可能となります。

 

予防保全のデメリット

コストがかかる

 

予防保全には定期的な点検やメンテナンスが必要なため、人件費や交換・メンテナンスの費用がかかります。

 

特に大規模な設備や機械になると、より専門的な知識や技術を持った人材の確保が必要となるため、予防保全には一定のコストがかかります。

 

完全に故障を防ぐことができない

 

予防保全は、突発的なアクシデントや外的要因による故障を完全に防ぐことはできません。

 

機械が不調をきたしていても、それを察知するのは困難です。

 

予防保全は、故障を最小限に抑えるための取り組みであり、必ずしも完全な故障防止を保証するものではないと理解しておきましょう。

 

保全スケジュールの調整が難しい

 

予防保全には定期的な点検やメンテナンスが必要です。

 

しかし、生産ラインの稼働時間や計画などによってメンテナンスのタイミングに影響が及ぶため、スケジュールの調整が難しくなる場合があります。

 

また、予期せぬトラブルが発生した場合には、急きょメンテナンスが必要となるため、スケジュールを変更しなければならないケースもあります。

 

予防保全の事例

 

事例の一つとして、設備導入時に造形ラインと溶解能力がマッチしない不具合がありました。

 

課題を共有しながら最適な炉仕様を提案し、操業支援システムを導入、可視化したことで、生産能力が倍増したとのことです。

予防保全事例 | 富士電機の工業電熱製品

予知保全と予防保全を組み合わせることの重要性


予知保全と予防保全の連携は、生産性や効率を上げるために重要な方法です。

 

この2つの保全法は違った手法ですが、メリット・デメリットを比較しながら連携を図れば、より効果的な戦略を描くことができます。

 

両者をバランスよく組み合わせることで、互いの課題を埋めながら問題に対処することが可能となるため、生産性や効率性をより向上させることができます。

 

予知保全と予防保全を組み合わせた効果的な保全戦略の構築方法


1.保全目標を設定する

最初に、どのような保全目標を設定するかを決める必要があります。
例えば、

・故障率の減少
・生産性の向上
・コスト削減

 

など目標を明確にしておくことで、戦略の方向性が定まってきます。

 

2.現状を分析する

 

現在の設備や機器の状況、全体の目的や課題を明確にし、分析しなければなりません。

 

例えば、故障の頻度や部品の消耗具合を調査することで、どのような保全方法が必要かを判断することができます。

 

設定した目標に対し、不足している部分を明らかにしましょう。

 

3.予知保全と予防保全のバランスを決める

機器や設備の寿命、故障した際の傾向、費用などを考慮してバランスを図り、適切なタイミングでメンテナンス計画を立案する必要があります。

 

また、故障の可能性が高い箇所は予知保全を重視し、寿命の限界に近づいている場合には予防保全に重点を置くなど、メリット・デメリットを考慮してバランスを取ることが重要です。

 

4.技術・リソースを活用する

技術やリソースを活用すれば、予知保全と予防保全の双方に対応した保全戦略を実行することができます。

 

最新の技術や機器の導入、データ分析ツールの活用、保全担当者のスキルアップなど、様々な対策を的確に行うことが重要です。

 

また、必要なリソースを適切に投入すれば、保全活動全体のコスト削減や生産性向上にもつながります。

 

5. 継続的に改善する

保全の戦略は、一度実施しただけでは十分な効果は得られません。

 

データ収集や分析を継続し、改善を繰り返すことが重要です。

 

新しい技術や保全方法の導入なども含め、設定した目標に近づける戦略を構築しましょう。

予知保全と予防保全の違いを理解して使い分けよう

今回は、予知保全と予防保全の違いについて解説しました。

 

どちらも保全するという目的は同じですが、その手法に差があります。

 

またメリット・デメリットにも違いがあるので、目的によって使い分け、あるいは適切な組み合わせで補完し合うなど、予知保全と予防保の効果的な導入を検討してみてはいかがでようか。


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