ポリタイプとは同じ化学組成は同じでも、異なった原子配列を示す結晶多形のことを言います。
炭化ケイ素であるSiCにもいくつかのポリタイプがあり、それぞれ特徴が異なるのです。
そこで今回の記事ではSiCにはどんなポリタイプがあり、それぞれどのような特徴があるのかを、詳しく解説していきます。
記事を読んで頂くことで、SiCの示すポリタイプについて詳しくなって頂けるはずです。
最後まで読んで頂き、SiCのポリタイプのことを徹底理解しましょう。
SiCのポリタイプとは?
SiCのポリタイプとは、基の化学組成は同じなのに複数の原子配列を示す結晶多形のことで、同じSiCでもそれぞれ特徴が違います。
SiCのポリタイプは炭素とケイ素の層の積み重ね方に違いがあり、それぞれのポリタイプで物理的にも電子的にも用途が異なるのです。
それでは、SiCのポリタイプについて次項でより詳しく解説していきましょう。
SiCのポリタイプの種類
SiCのポリタイプには、以下のような種類があります。
- 3C-SiC(立方晶)
- 4H-SiC(六方晶)
- 6H-SiC(六方晶)
それぞれのポリタイプで特性や用途が異なるので、詳しく解説しますね。
3C-SiC(立方晶)
SiCのポリタイプの1種類目は、3C-SiCです。
こちらは立方晶の結晶をしたポリタイプで、タイプAタイプBタイプCの積層組み合わせがABCABCと3個毎に繰り返し配列されています。
別名「β-SiC」とも呼ばれ、他のポリタイプに比べて製造が容易なので幅広く多くの用途に用いられるSiCのポリタイプです。
4H-SiC(六方晶)
SiCのポリタイプの2種類目は、4H-SiCです。
こちらは六方晶の結晶をしたポリタイプで、タイプAタイプBタイプCタイプDの積層組み合わせが、ABCDABCDと4個毎に繰り返し配列されています。
4H-SiCに関しては、高い電子移動速度と大きなバンドギャップが特徴で、高周波デバイスや高電圧デバイスによく用いられるSiCのポリタイプです。
6H-SiC(六方晶)
SiCのポリタイプの3種類目は、6H-SiCです。
こちらのポリタイプは六方晶の結晶をしたポリタイプで、タイプAタイプBタイプCタイプDタイプEタイプFの積層組み合わせが、ABCDEFABCDEFと6個毎に繰り返し配列されています。
4H-SiCと同じように、六方晶の構造ですが層の配列が異なる為4H-SiCとは少し違った特性を持っているのです。
例えば、高温耐性があるので高温下の環境で使用するデバイスに向いているでしょう。
また、放射線耐性もある為、放射線を通常より多く浴びる可能性がある環境での使用にも適しています。
同じSiCの結晶ですがポリタイプが異なるだけでこれだけ多くの違いがあるのです。
ポリタイプの違いがSiCウエハに与える影響
SiCのポリタイプにはいくつかの種類があることが、お分かりいただけたと思います。
このように積層の組み合わせが異なるだけで、SiCの特性が変わりSiCウエハにした状態でもその影響を受けます。
主な変化として、以下の2つのポイントを挙げてみました。
- 電気的特性の違い
- 耐熱性や耐放射線性の違い
それぞれの特性の違いを、少し詳しく解説していきましょう。
電気的特性の違い
SiCのポリタイプの違いは、SiCウエハに電気的特性の違いを与えます。
最も幅広く利用される3C-SiCに関しては、電気的特性が強くないのに対し、4H-SiCという六方晶のポリタイプをしたSiCウエハは特徴的な電気的特性を持っています。
4H-SiCは3C-SiCと比べ、高い電子移動性と大きなバンドギャップを持っている為、高周波デバイスや高電圧デバイスに使用しやすいのです。
この特性を知ってSiCウエハを選ぶことで、より効率的にデバイスを稼働させることが可能になります。
耐熱性や耐放射線性の違い
またSiCポリタイプの違いは、耐熱性や耐放射性でも違いが出てきます。
より複雑な積層をした6H-SiCは広く利用されている3C-SiCに比べて耐熱性や耐放射性が非常に高いです。
熱量が多く3C-SiCでは耐えられない環境下でも、6H-SiCのSiCウエハを使うことで十分にデバイスを安定稼働させることが可能になります。
また、放射線量が通常より多い環境下でも6H-SiCのSiCウエハを利用することで、デバイスは安定して稼働するでしょう。
このように、SiCのポリタイプはSiCウエハの特性に直接的に影響を与えるので、SiCウエハを選ぶ際はどのポリタイプのウエハにするのかを適切に決めなければいけません。
間違えたSiCウエハの選び方をしていると、デバイスの稼働を妨げる要因になる可能性も高くなります。
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というわけで今回はSiCのポリタイプや、SiCのポリタイプの違いがSiCウエハに与える影響について、詳しく解説してきました。
最後に記事内容を簡単に振り返っておきましょう。
- SiCは積層構造の違いでいくつかのポリタイプが存在する
- SiCを有効活用するには、ポリタイプ毎の特性を理解し、適切なSiCウエハを選ばなければいけない
もし自社製品にSiCウエハを活用されるのであれば、金沢機工にご相談されるのがおすすめです。
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最適なSiCウエハを選ぶ、適切なアドバイスを受けられるでしょう。